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よく噛むことは脳の活性化に繋がる?
広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
展開・顎口腔頚部医科学講座(歯科矯正学)教授 丹根一夫


これまでのさまざまな研究や疫学調査から、歯を失うことと、それに続く噛み合わせ機能の低下は、脳をはじめとする中枢神経系の構造や機能に何らかの影響を与えるものと推察されます。そこで、我々は、生まれつき歯の萌出がみられない大理石骨病(op/op)マウスと正常マウスにおいてアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドベータ蛋白(Aβ)の発現、ならびに海馬錐体細胞の変化と記憶・学習能力を調べました。

その結果、30日齢正常マウスにおいてはAβ沈着がまったく認められなかったのに対し、同日齢のop/opマウスでは大脳皮質、海馬、扁桃体、視床下部の各領域において種々の形態のAβ沈着斑が多数観察されました(図1)


次に、固形餌と粉末餌で飼育した正常マウスの海馬における錐体細胞を観察した結果、360日齢粉末餌飼育群では、固形餌群と比べて細胞密度が減少していました(図2)

 

また、海馬CA1、CA3領域における錐体細胞数を算出した結果、180日齢においては、両群間に有意差は認められなかったのに対し、360日齢粉末餌飼育群では、錐体細胞数が同日齢固形餌飼育群と比較して有意に少ないことが明らかになりました(表1)


最後に、固形餌と粉末餌飼育マウスの水迷路実験の結果、180日齢では固形餌、粉末餌飼育群のゴール到達時間に明確な差は認められなかったが、360日齢では、固形餌飼育群と比較して粉末餌飼育群のゴール到達時間が長く、試行2日目、および3日目には両群間に有意差を認めました(図3)


以上の結果から、歯を介した咀嚼による刺激は、脳や海馬などの中枢神経系を刺激して、記憶・学習などの機能を保つことに貢献していることが明らかとなりました。このことから、日頃から歯を大切にし、歯を出来るだけ保存すること、ならびに歯を残すことを可能にする歯科医療をきちんと受けることの意義が科学的に検証されたことになります。実際に、歯をたくさん残しているお年寄りは元気で、医者いらずの日々を送っておられます。

 

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