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選食力を身につけよう!(その9)-残留農薬について-
 
広島市歯科医師会顧問 NPO日本食育インストラクター 小松 昭紀

残留農薬とは農作物や動植物に残存している農薬のことで、殺虫剤、殺菌剤、除草剤などがあり、約800種が国から残留基準値を指定されています。
出荷するための野菜や果物は、農家自身は食べないといわれるくらい農薬が使われているようです。とくにハウス栽培野菜は農薬の使用量が多く、紫外線による分解力も悪いので、その残留が不安です。
また、現在は使用禁止されていても、分解力が悪いために土壌に残ってしまっている有機塩素系農薬などが、農作物や牧草などに吸収され、それを飼料として育った牛や豚や鶏を汚染し、とくに肉の脂肪にたまっている不安があります。
さらに海外で農作物の収穫後に使われる「ポストハーベスト(収穫後)農薬」など、様々な問題が生じています。「ポストハーベスト」とは、正確には「ポスト・ハーベスト・アプリケーション」といい、品質保持のために作物の収穫後に農薬を散布することです。
畑にある間に使われた農薬は、蒸発したり、太陽光線などで分解され減っています。しかし、「ポストハーベスト」の場合は、農薬をかけて保存するだけですから、減らないで高い濃度のまま残留してしまいます。
輸入食品については、輸出国の基準が日本のものより低い場合や、日本では使用が認められていないものもあり、安全性に問題が生じています。現在、国際的にも自粛する動きが出てきています。

残留農薬の基準

残留農薬の基準は厚生労働省が農薬ごとに定め、農産物によっても異なっています。厚生労働省は2006年5月末からポジティブリスト制度を発足させ、生鮮食品から加工食品まで、すべての食品を対象に農薬、動物用医薬品、飼料添加物の残留基準値を定め、それを超えて残留する場合は販売を基本的に禁止しています。
この制度では、基準値を指定した農薬などの化学物質を約800品目に増やし、それ以外の化学物質は残留基準値を一律0.01ppm以下と設定しています。その量を超えると違反として取り締まりの対象とされています。
どの食品を通常どのくらいの量食べるかの調査に基づいて、それぞれの食品に基準値近くまで農薬が残留していると仮定し、それを一生にわたって毎日食べ続けても健康への影響が出ない量を「許容一日摂取量(ADI)」として、その8割以内に収まるよう基準を設
定しています。残り2割は、大気中や水などから体内に入ると見積っています。
ADIは、毒性、発がん性、繁殖への影響などをみる動物実験で決め、動物とヒトとの差異や個人差などを考えて、通常、動物で影響の出なかった量の1/100に設定しています。

輸入食品の不安

わが国で消費されている食品の約40%が輸入品といわれています。輸入食品には、次に述べるような不安が考えられます。
1.日本で禁止されている農薬の使用
日本で禁止されている有機塩素系の農薬が、アメリカでは許可され散布されています。
また日本と比較すると、諸外国、とくにアメリカの農薬残留基準値が高いことが多く、肉にも残留していることがあります。
2.ポストハーベスト農薬
収穫後に農薬などを使用し、品質保持の処理をするポストハーベスト農薬は、日本では認められていません。禁止されている農薬の残留濃度の高い検出例があるにもかかわらず、日本ではそのチェック体制ができていません。また、アメリカ国内では使用が禁止されている臭化メチルが日本向け農作物に盛んに使われ、検出もされています。
3.日本で認められていない添加物の使用
輸入レモンや輸入オレンジなどには、防カビ剤を必ずといっていいほど使用しています。また、アメリカではレーズンやプルーンのカビを防ぐため、本来は農薬であるキャプタンが添加物として認められ、使用されています。
4.遺伝子組み換え作物
日本では現在、大豆、なたね、とうもろこし、じゃがいも、綿実の5種類が市場に出回っています。日本で販売されている遺伝子組み換え作物はすべて輸入品です。
遺伝子組み換え食品の不安点は、まずアレルギーの不安です。新しい遺伝子で生み出されたタンパク質が、アレルギーの新たな原因物質になる不安です。このほかにも、生態系への影響不安などがあります。(既述)

 

輸入小麦には必ずポストハーベスト農薬が
輸入小麦については必ず農薬が検出されます。アメリカやカナダでは収穫した小麦は袋に入れずバラでサイロに貯蔵しておき、それを船にバラ積みして日本に運んできます。防虫のためサイロに入れる時に農薬をかけ、場合によっては船に積み込む時にもう一度農薬を散布して日本に運んできます。その農薬がどうしても小麦本体に残ってしまうのです。
日本の小麦の自給率は14%に過ぎず、輸入小麦が86%を占めています。実際の国産小麦の流通量は、パンで僅か1%、うどん・そうめんで60%、菓子用で20%、家庭用小麦で10%、中華麺で3%程度で、ほとんど輸入品で占められている状況ですが、中でもパンがいちばん輸入小麦に頼る割合が高くなっています。

「学校給食に国産小麦を」運動
輸入小麦に対して国産小麦には、ポストハーベストの必要がないので農薬は検出されません。そこで「学校給食に国産小麦を」という運動が広がっています。埼玉県が開発した「さきたまロール」という県産小麦を使った給食用パンなども、子供たちに安全な給食を食べさせたいと願う多くの保護者から出てきたものでしょう。また、高崎市が学校給食に出しているうどんなども地場産小麦を使っています。学校給食先進地では、そうして出来る限り輸入小麦の使用を控える方向で工夫がされています。
「国産小麦を学校給食に」運動は東京都立川市、調布市、茨城、京都、和歌山、兵庫、福島など全国に広がっています。

1年も腐らない柑橘類
輸入のオレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類などはどうしてもカビの心配がありますから、輸入に際して防カビ剤が使用されます。青果を緑色のうちに採って2・4
‐Dなどの除草剤をかけて低温で貯蔵しておき、日本に輸出する時になって、イマザリルなどの防カビ剤をシャワーのようにかけてから日本に運んできます。
グレープフルーツやオレンジは、1ヵ月ほど置いていても変質しません。また、冷蔵庫に入れておけば1年くらい保つといいます。外側はしわがよりますが大丈夫です。
日本の柑橘類では生産時に農薬は使いますが、収穫後に使うことは禁止されています。
バナナも問題です。バナナは年間109万トンも輸入されていますが、輸入元はフィリピンが大部分を占めます。日本へは緑色の状態で収穫され、防カビ剤のシャワーを浴びてやってきます。そして大部分のバナナにはカイガラ虫などが付着しているため、密閉した倉庫で青酸ガス燻蒸を行います。完全に殺虫処理した後、エチレンガスを通した室で25度くらいに加温し追熟し、黄色味をわずかに帯びたところで出荷されます。

子どもたちが大好きなポテトフライにも
ポテトフライは、じゃがいもを四角く切って油で揚げたものを冷凍して輸入するのですが、日本でもう一度軽く揚げて店頭に出します。子どもたちの好きな食べ物の一つですが、輸入ポテトフライの中には、クロロプロファムという除草剤が必ず含まれているのです。じゃがいもは放っておくとすぐ芽が出てしまうため、芽止めのためにかける農薬です。

中国産冷凍ホウレン草が店頭から消えた
輸入品のホウレン草は生で販売されているものはなく、すべて冷凍で販売されています。検査の結果出てきたのは、クロルピリホスという農薬で、日本では建物のシロアリ駆除に使っていた薬です。現在は、シックハウス症候群を引き起こすということで使われなくなっているものです。冷凍ホウレン草事件により、大量の違反が発見された場合には、輸入禁止の措置がとれるよう、食品衛生法が改正されるという動きにまで発展しました。

冷凍枝豆の残留農薬
スーパーで売っていた中国産の「冷凍塩あじ茶豆」からは、殺虫剤のフェンパレートが検出されました。また、居酒屋などでビールのつまみに出される枝豆は、必ず濃い緑色をしていて、何らかの色づけがされているのではないかと思われますが、そのほとんどが輸入ものです。これらの居酒屋の枝豆からも農薬が検出されました。さらに、新幹線に乗る人が買う東京駅のホームで売られているものからも、殺虫剤が検出されました。
日本では7、8月が枝豆の最盛期ですが、日本で採れたものからは、ほとんど農薬は出ませんので安心です。

いつまでも青々としている米国産ブロッコリー
ブロッコリーは約5割が輸入ものですが、米国産ブロッコリーからも農薬が検出されました。有機リン系殺虫剤のジクロルボスとピラクロホスでした。
よくスーパーなどで、国産と米国産ブロッコリーが並んで売られていますが、国産の方は2日くらい経つと先の方が黄色く変色してきます。ブロッコリーは蕾ですから、黄色味を帯びてくるのは当然なのです。ところが輸入品は何日経っても緑色をしています。砕いた氷の間に詰められて輸入されてきますが、緑色がそのままなのは多分成長調整剤が振りかけられているためと考えられます。
ビタミンCを測定したところ、輸入品は国産品の6割しかありませんでした。これでは、農薬は残っているし、栄養価は低いし、確かに値段はいくらか安いかもしれませんが、割に合わないのではないでしょうか。食べるなら新鮮な国産に限ると思います。

味も辛味もない大根おろし
最近はカット野菜でも輸入品が増えました。おろししょうがや大根おろし、とろろ芋のおろしたものまでが輸入されています。コンビニで売られているそばセットでは、そばも小麦も材料は輸入が多く、アルミトレイに入った大根おろし、とろろおろし、刻みネギなどまで輸入品で占められています。また、ホテルのバイキングではこうした冷凍食材はおなじみで、便利によく使われています。例えば、しらすと大根おろしとか、アジの開きや焼き魚と大根おろしは定番です。しかし、そうしたところに並ぶ冷凍を戻した大根おろしを口に入れてみても、ほとんど味も辛味もないという状態になってしまっていて、拍子抜けするものに多くお目にかかります。これでは、見た目は確かに大根おろしですが、その風味も食感も大根おろしとはまったく別物にしか見えません。やっぱり、大根おろしはおろしたてに限ります。
その冷凍大根おろしと、生の大根からすりおろした大根おろしを比べてみると、味や食感ばかりでなく栄養価の点でも歴然とした差が見られるのです。

6割しかない輸入野菜のビタミンC
この大根おろしのビタミンCについては、アメリカ産と国産のものとを比較してみたところ、国産品に比べてアメリカ産のものは6割しか含まれていませんでした。冷凍品の場合はさらに成績が悪く4割にまで落ちていました。ブロッコリーやレモンでも同じ傾向が見られました。4割しかないのでは、カスを食べているようなものです。ちなみに、ビタミンCの含有量が一番多かったのは産直品でした。そして同様に、輸入野菜と産直野菜の硝酸イオン濃度を比べてみると、産直野菜の方が低い値を示しました。

(以上、どの事例も「農民連食品分析センター」による)

食品は遠くからやってくる
コンビニなどで「和風幕の内弁当」が売られています。この弁当の材料を調べてみると、20品目中、米・さつまいも・こんにゃく・たくわん・卵の5品目が国産でしたが、その他は外国産でした。具体的には、サケはデンマーク、鶏肉はブラジル、エビはタイ、ニンジン・レンコン・シイタケ・里いも・小松菜・たくわん・白ゴマ・キュウリ・白インゲン豆は中国、油揚げがアメリカでした。黒ゴマ・白ゴマはトルコ、金時豆はボリビアから来ていました。材料の3/4は外国産で、遠くから運ばれてくるその平均輸送距離は8,024km、総距離は16万kmといいますから、地球を3回半回った距離にもなります。
「和風」というのに、ほんとうに遠方から来ています。添えられたキュウリのお新香は、生のキュウリは輸入できませんから、塩漬けのキュウリを輸入し、それを塩抜きして漂泊し、着色、味付け、香り付けをして作ったものでしょうか。
輸入農産物が環境に与えている負荷を数値化するものとして考えられたのが「フードマイレージ」です。フードマイレージという言葉は、イギリスの消費者運動家ティム・ラング氏が1994年に提唱した運動に由来したもので、食糧の生産地から消費地までの距離に着目し、環境への負荷の軽減のために、なるべく近くでとれた食料を食べることで、輸送に伴うエネルギーを抑えようという運動です。日本では、農林水産政策研究所がこの考え方を元に、輸入食料について「輸入食料の総重量×輸送距離」の数値で表していますが、日本はそれが最大で、それだけ炭酸ガスを放出していることになります。輸入品は農薬など心配な点もありますし、何としても安心安全な国産を増やし、輸入を減らしたいものです。


■各国のフード・マイレージの内容(2001年)

(資料:農林水産政策研究所)    

日本には、リンゴ、みかん、柑橘、カキ、ナシ、ブドウなど美味しい果物がたくさんありますが、パイナップル、アボガド、マンゴー、パパイヤ、キウイなどを輸入しています。
オーストラリアからはマンダリン(みかん)やサクランボなどを輸入しています。肉類では牛肉がオーストラリアから輸入されます。羊肉と馬肉もほとんど輸入で、北海道のジンギスカンも、熊本、松本の馬肉、馬刺しも輸入ものが多くなっています。
酪農品のチーズはその85%が輸入ですし、蜂蜜は92%が輸入です。蜂蜜は日本に来て精製され、きれいな容器に入れられて、「天然ハチミツ」と表示されて販売されます。原産国表示はされていない場合があります。偽装品としては、ブドウ糖を酵素で果糖化した転化糖を加えたものもあります。
日本のフードマイレージの約7割は、穀物類と大豆で占められています。限りあるエネルギー資源の消費、地球環境への負荷を考えると、フードマイレージを低い数値に抑え、地産地消を推進することが重要であることがよく理解できます。

また、「バーチャルウォーター(仮想水)」という指標もあります。農産物や畜産物の生産には大量の水が必要です。「多くの食料を輸入品に頼っている場合は、輸入食材の生産に必要な水を輸入しているのと同じである」という発想から、1990年代にロンドン大学のアンソニー・アラン教授が提唱した考え方で、今では世界的な共通認識になりつつあります。
日本の食料総輸入量に当てはめると、2000年度のバーチャルウォーターの総量は640億m3(琵琶湖の貯水量の約2.5倍)となり、国内の農業用水の使用量590億m3を上回る水を輸入していることになります。この数値は、諸外国と比べても断トツのトップです。ちなみに、2005年度のデータでは、800億m3に増加しています。
世界的に水不足が深刻化する中、大量の食料を輸入している日本は、世界の貴重な水資源も間接的に大量に輸入しているということになります。

<残留農薬を避ける対策>

国産品を選ぶ―地産地消
残留農薬の基準が厳しくなったから安全が保障されるかというと、残念ながら疑問が残ります。不安なら多少高価でも国産の有機栽培のものを選び、残留農薬の除去方法を実践して自衛した方がよいでしょう。
生産者の顔が見える地元産の野菜を選べば、無駄な輸送コストも省けます。また、色や形にこだわりすぎると生産者は農薬を多めに使用しがちになります。少々形が悪くても味に変わりはないと割り切り、より安全なものが手に入るようにしたいものです。

「有機」の表記のあるものを選ぶ
「有機」と表記できるのは、農薬や化学肥料を、一年生作物は過去2年以上、多年生作物は過去3年以上使わない田畑で栽培された、遺伝子組み換えでない農作物で、有機JASマークがつけられています。

調理法を工夫する

  1. よく水洗いをする
    農薬の多くは表面に付着しているので、よく水洗いすればおおかたの農薬を落とせます。50℃のお湯で洗えば、さらに効果的に落とすことができます。
  2. 皮をむく
    皮に付着した農薬を除くには、もったいないと思っても皮を厚めにむくのが有効な方法です。
  3. ゆでる・揚げる・炒める
    高温で調理すると、農薬が気化し分解されます。とくに100℃以上で調理するとよく除去できます。
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