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選食力を身につけよう!(その10)-とにかくマーガリンをやめよう!-
 
広島市歯科医師会顧問 NPO日本食育インストラクター 小松 昭紀

「偽物のバター」マーガリンの正体

バターとマーガリンを比べたとき、「植物性だから」という理由でマーガリンのほうが健康によいと思っている方は案外多いのではないでしょうか。それは大きな間違いです。
植物油は不飽和脂肪酸でできていますが、その中で、フラックスオイル(亜麻仁油)やシソ油に多いα‐リノレン酸などはオメガ3脂肪酸に属します。また、コーン油やゴマ油、マヨネーズなど、一般的な植物油の主成分であるリノール酸はオメガ6脂肪酸に属します。
このオメガ3とオメガ6脂肪酸は、どちらも私たちの体内では作れないことから、食事などを通して外から補う必要がある必須脂肪酸です。そして、この2つの必須脂肪酸が全く正反対の性格を持っているということが、大きな特徴であると同時に、注意しなければならない点なのです。
まず、どちらも細胞膜の材料になることは共通しています。オメガ3はEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)の形で、オメガ6はアラキドン酸の形で細胞膜を構成しますが、オメガ3の比率が高いと細胞膜の柔軟性を高めるのに対し、オメガ6の方が多いと細胞膜を硬くするという相反する働きがあることが明らかになっています。
一般に、オメガ3とオメガ6の摂取比率は1対2から1対4程度が適切であるといわれており、伝統的な日本の食事であれば、この2つを理想値で摂ることができます。ところが現在の欧米型の食生活では、この比率が1対10、あるいは1対40に及ぶ場合も懸念され、オメガ6を極端に摂り過ぎる傾向があることが指摘されているのです。オメガ6過多の食事を続けると、筋肉や血管の柔軟性が損なわれるほか、血流がスムーズでなくなり、体のいたるところで炎症が必要以上に強く現れることになります。こういったことが動脈硬化や高血圧の原因となり、ありとあらゆる健康上のトラブルを招くことになりかねないのです。
マーガリンはオメガ6のリノール酸過多の食品であるため、オメガ3との摂取バランスを極端に乱してしまうことになります。それだけでも健康上のデメリットは非常に大きいのですが、最大の問題は「偽物のバター」であるということです。
マーガリンは水素添加という技術を用いて製造されます。一般の植物油などを見れば分かるとおり常温では液体です。これに120度~210度の高温・高圧状態で水素ガスを反応させるという化学的な方法により、植物油であるにもかかわらず常温でもやわらかいバターのような状態という、何とも不自然な物質に無理やり変化させるのです。これが“プラスチック食品”の異名を持つマーガリンの正体です。
そして加熱や意図的な水素添加の過程で、トランス型脂肪酸という不飽和脂肪酸の"変種”が作り出されます。これは自然界には存在しないものです。したがって、このトランス型脂肪酸が細胞膜の組織内に大量に存在すると、細胞膜が正常に機能しなくなるのです。

トランス型脂肪酸

トランス型脂肪酸は、1900年代の初め頃から人工的に作られるようになった油です。原材料の植物性油脂は常温では液体です。そこに無理やり、水素分子を工業的に添加して固形(飽和状態)にすると、油がトランス型脂肪になってしまうのです。どうしてわざわざこんなことをするのかというと、固まっている方が扱いやすく、利便性が高いからです。
油脂を高温で加熱してもトランス型脂肪酸はできてしまいます。市販の植物油のほとんどは、原材料に化学溶剤を混ぜて高温で加熱し、蒸発させることで作られています。スーパーで安売りされている油の大半はトランス型脂肪酸入りです。便利さと安さを追求して生み出された「悪い油」、それがトランス型脂肪酸です。
トランス型脂肪酸で作られたマーガリンは、高価だったバターに似た安価な油ということで、たちまち多くの人が使うようになりましたが、「トランス」というように、本来、自然な状態では存在しない油です。自然の一部である私たち人間の身体は、自然界に存在していない物質を栄養分として摂り込んでも本来は使うことができません。まったく使えなければまだいいのですが、困ったことに、オメガ3やオメガ6など本当に必要な油が体内に不足していると、トランス型脂肪酸でもやむを得ず使われてしまう。これが大問題なのです。
一つひとつの細胞が内側に栄養分を摂り込む仕組みの1つとして、レセプター(受容体)を介した方法がありますが、レセプターを正常に働かせるために、リン脂質(水溶性と脂溶性の両面をもつ)が重要な役割を果たしています。そのリン脂質の役割の一部を、トランス型脂肪酸が代行してしまうことがあるのです。ところが、トランス型脂肪酸は人工的な油ですから、レセプターとしては正常に作動せず、いままで細胞内に浸透できなかったウィルスやバクテリア、有害物質などが簡単に細胞内に入り込んでしまい、本来入るべき大切な栄養素などが摂り込まれなくなってしまいます。そうなると、細胞は傷ついたり栄養不足になって、やがて死滅します。細胞内に取り込まれなかった糖分などは血中にだぶつくので、糖尿病にも近づくことになります。そればかりか、ホルモン異常、生殖機能障害、肝臓障害、血栓などの症状が起こることも考えられます。
便利なために今ではいろんな食品に使われるトランス型脂肪酸ですが、特にマーガリンに大量に含まれています。ケーキやパンをつくるときに使われる油脂、ショートニングにもたくさん含まれています。菓子などの成分表にしばしば見られる「植物性油脂」という表示は、ほとんどショートニングのことを指しています。
コーヒーに添えられるミルク風のコーヒーフレッシュも、トランス型脂肪酸の固まりのようなものです。植物油に水と乳化剤を混ぜ、香料や、白い色を出すための着色料などが加えられているだけのものですが、高温で処理されているため、植物油がトランス型脂肪酸に変化してしまっています。毒性だけあって栄養価はまったくない、“腐らないミルク”として重宝されているものの、食品とはいいがたい代物です。体調管理に気を配る賢い人なら、コーヒーブレイクにも、コーヒーフレッシュは使わないでしょう。
食品を購入する時、成分表の原材料にトランス型脂肪酸が入っていないかどうか、チェックしてみましょう。マーガリンピーナッツバターショートニング(菓子パンやスナック菓子類に使用されている)、加工油脂ファットスプレッド、あるいは精製された植物油(サラダ油、天ぷら油など)。
ショートニングは正式にはショートニングオイル(shortening oil)と呼ばれ、揚げ物やクッキーなどのサクサク感を出す、つまり「もろくする」という意味のshortenからきている言葉です。家で揚げ物をするより、出来合いのものを買ってきたり、お店で食べたりするもののほうがカラッと仕上がっているという印象を受ける方も多いでしょう。これらを「専門店のなせる業」と思っていたら、実はショートニングを入れた油で揚げているだけというケースも決して珍しくありません。ショートニングでもろく崩れていくのは、ずばり私たちの体なのです。
また、ファットスプレッドは、水分や乳化剤の混合割合が多く、よりクリーム状になったマーガリンだと思えばよいでしょう。ほかにも、市販のサラダ油やマヨネーズ、ドレッシングの大半にもこういった水素添加された油が用いられており、トランス型脂肪酸の摂取源となっています。
揚げ物も要注意です。惣菜や外食で揚げ物は人気ですが、トランス型脂肪酸を大量に含んだ安い油で揚げられたものがほとんどです。つまり衣がトランス型脂肪酸だらけ。たとえ良質な油を使ったとしても、高温にするだけで油は酸化して過酸化脂質という有毒物質になります。油から煙が出るような高温で炒めるのはNGです。
摂取した過酸化脂質を無毒化するためには、大変なエネルギーを消費しなければならず、もともと揚げ物は身体に負担のかかる非効率な食べ物です。トランス型脂肪酸の危険性も考えれば避けるにこしたことはありません。こんなものを毎日のように大量に食べていると、身体は一気に老化してしまいます。

過酸化脂質にも気をつけよう

私たちの体を構成する細胞一つひとつの細胞膜には、オメガ3とオメガ6の不飽和脂肪酸が豊富に含まれていますが、実はこのことによる弱点があります。それは、活性酸素によってもっともダメージを受けるのが不飽和脂肪酸であるため、細胞膜が錆びやすい(酸化しやすい)ということです。
不飽和脂肪酸は活性酸素の影響で、過酸化脂質という不安定な物質になります。実はこの過酸化脂質も活性酸素の一つであり、今度はそれが細胞膜をはじめ、血液中の中性脂肪やコレステロールなど、不飽和脂肪酸の豊富な物質を酸化の標的にします。細胞膜中の不飽和脂肪酸が過酸化脂質に変化すると、今度は隣り合う細胞膜の不飽和脂肪酸が餌食になってしまうのです。
このように、過酸化脂質は連鎖反応的に次々と細胞膜を蝕んでいくわけですが、揚げ物や干物スナック菓子などの食品にも過酸化脂質が含まれています。食品中の過酸化脂質は、99.5%が体内で安全な形に変わってから吸収されるとする意見もあるとはいえ、こういったものを頻繁に食べていれば、残りの0.5%も決して楽観的な数字ではなくなり、体に悪影響を及ぼすリスクが高まるといえます。なるべく口にしないにこしたことはありません。

トランス型脂肪酸摂り過ぎ注意―悪玉コレステロール増加、肥満やアレルギー性疾患も

欧米での研究でトランス型脂肪酸が問題になったのは、LDLコレステロール値を上昇させ、HDLコレステロール値を低下させるなど、虚血性心疾患のリスクを高めることが示されたからです。WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の合同専門家協議会報告書(2003年)では、「トランス型脂肪酸の摂取はエネルギー比で1%未満」にすることを推奨しています。
2007年6月に日本の内閣府食品安全委員会が日本人の平均的な食生活におけるトランス型脂肪酸摂取量の調査結果を公表しましたが、国民の1人1日当たりの摂取量について見ると、アメリカでは5.8g、エネルギー比2.6%に対して、日本は0.7~1.3g、エネルギー比0.3~0.6%でした。しかし、若年層や女性では1%を超える人もいるといわれています。
こうした状況で、世界各国では食品に含まれる栄養成分の表示を義務化する動きが活発になっています。アメリカで行われた8万人もの女性の被験者を対象にした研究では、トランス型脂肪酸を最も多く摂取するグループは最も少ないグループに比べて、心筋梗塞を起こす危険性がおよそ3割も高かったことが示され、その他トランス型脂肪酸の有害性を考慮し、アメリカの大手食品メーカーは製品中のトランス型脂肪酸量の削減を図り、2006年1月から、あらゆる食品にトランス型脂肪酸の含有量のラベル表示が義務付けられました。さらにニューヨーク市では、2006年12月6日に、自治体としては世界で初めて、レストランでのトランス型脂肪酸入り食用油の使用禁止が発表され、シカゴやロサンゼルスでも同様の規制を検討しているといわれています。
トランス型脂肪酸の有害性を考慮し、アメリカ政府は、トランス型脂肪酸の1日の摂取量はゼロを基準にしているだけでなく、米国医学研究所のレポートでは「安全摂取量はない」とまでいっています。アメリカ医師会からはトランス型脂肪酸対策への支援も明言されています。また、ヨーロッパ諸国、韓国、台湾などでも、トランス型脂肪酸対策が国家レベルで積極的に推進されています。
日本でも、スナック菓子など身近な食品に含まれるトランス型脂肪酸の健康への影響が懸念されるようになり、消費者庁は食品メーカーなどに対して、食品にトランス型脂肪酸が含まれる場合、含有量を自主的に表示するよう要請しています。ただ、含有量については分析精度にばらつきがあることから、食品100g当たりに含まれる量が0.3g未満の場合は「ゼロ」などと表示できることになっています。
本来の食事とは健康を維持していくためのものですが、このように健康を害するような食品が店頭に並んでいたのでは、私たち消費者はわざわざそれを選んで購入していることにもなります。「自分の健康は自分で守る」ためにも、「選食力を身につける」必要があるのです。

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