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選食力を身につけよう!(その11)-油の種類と摂り方知っていますか?-
広島市歯科医師会顧問 NPO日本食育インストラクター 小松 昭紀

脂肪の種類に注目しよう

■飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
脂肪には大きく分けて飽和脂肪酸不飽和脂肪酸の2つがあり、飽和脂肪酸は牛肉や豚肉、乳製品など動物性の脂肪に多く含まれています。飽和脂肪酸は体内で合成できるため、食事から必ずとらなければならないというわけではなく、むしろ摂り過ぎによる弊害の方が指摘されるくらいです。一方、不飽和脂肪酸はさらに、オメガ3系不飽和脂肪酸とオメガ6系不飽和脂肪酸オメガ9系不飽和脂肪酸という3種類に分類されます。

 

■オメガ3系不飽和脂肪酸とオメガ6系不飽和脂肪酸
オメガ3とオメガ6はどちらも私たちの体内では作り出されないことから、食事などを通して外から補う必要がある必須脂肪酸です。どちらも細胞膜の材料になることは共通していますが、オメガ3の比率が高いと細胞膜の柔軟性を高めるのに対し、オメガ6の方が多いと細胞膜を硬くするという、全く正反対の性格を持っているということは、前回のマーガリンの項でも述べました。
細胞膜は、栄養素の取り込みや老廃物の排出、細菌やウイルスの侵入防止、細胞同士の情報伝達など、私たちが生きていく上で基礎となる重要な役割を果たしています。筋肉や血管、心臓はそのしなやかさが鍵となり、これらが正常に機能するかどうかは細胞膜の柔軟性にかかっているといっても過言ではありません。また、脳や目での適切な情報伝達にも、オメガ3とオメガ6のバランスは非常に大切です。理想的なバランスは、オメガ3系1:オメガ6系4といわれています(厚生労働省)。
オメガ3には、サケやイワシなどの魚油に多いエイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA)、フラックスオイル(亜麻仁油)やシソ油に多いα‐リノレン酸などがあります。α‐リノレン酸は体内でEPAやDHAに変化します。
一方のオメガ6は、コーン油やゴマ油、マヨネーズなど、一般的な植物油の主成分であるリノール酸や、動物性の脂肪に飽和脂肪酸とは別に含まれるアラキドン酸が該当します。

 

■オメガ6過多の現代食
外食や加工食品の台頭で、飽和脂肪酸やオメガ6系脂肪酸の摂取量が増え、日本人の脂肪摂取量バランスは大きく変わってきました。伝統的な日本の食事であれば、オメガ3とオメガ6を理想値で摂ることができますが、現在のような欧米型の食生活では、オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の摂取比率が、1:10~40にまでゆがんでいるという指摘もあります。摂取目標の1:4に近づけるよう、意識してオメガ3系脂肪酸を摂りたいものです。

 

■健康維持に欠かせないDHAとEPA
魚介類に多く含まれているDHAとEPAは共にオメガ3系多価不飽和脂肪酸に属し、食事から摂る必要のある必須脂肪酸です。DHAとEPAは血栓のできるのを抑制し血液をサラサラにします。EPAなどが血液中の赤血球の表面の膜を軟らかくすることで、毛細血管のような狭いところでも血液がスムーズに流れるようになるのです。それゆえ、DHAとEPAの摂取は脳梗塞や心筋梗塞といった血管の病気を防ぐことができます。
また、血液中のコレステロール値や中性脂肪値を下げ、動脈硬化や心臓病などの生活習慣病の予防に効果があるとされています。花粉症などアレルギー疾患の症状を緩和する効果も最近は注目されています。生活習慣病が気になる人は、青背魚を1日1食とり入れるようにするなど、定期的に食べるようにするのが理想的です。
DHAにあってEPAにはない機能としては、脳や目などの神経組織の働きを改善する効果です。DHAは脳への入り口である脳関門を通過できて脳へ運ばれますが、EPAは脳には到達できません。DHAは人間の脳の海馬と網膜に大変多く含まれている成分です。
DHAは脳の中ではリン脂質として存在しており、細胞膜の形成に重要な役割を果たしています。特に胎児期や幼児期にDHAが不足すると脳細胞が少なくなる危険性があり、知能や精神的な発育面にも影響があると言われております。また最近の研究では、アルツハイマー病や鬱病とも関連があるとの指摘もあります。ちなみにDHAを含む母乳で育てた子のほうがDHAを含まない調合乳で育てた子より認知機能が高いという結果があり、現在市販されている育児用ミルクにはDHAが添加されています。
また、EPAはLDLコレステロール(悪玉)を減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やす以外に中性脂肪を減らす効果が確認されています。EPAは肝臓での中性脂肪合成を抑制するのと同時に、中性脂肪を分解する酵素の働きを高めるため中性脂肪が減少します。
このように、DHAとEPAの摂取は「脳神経系の必要成分」「情緒の安定」「血栓を防ぎ、血中脂質を改善して動脈硬化を防ぐ」「動体視力の向上」「老人性痴呆の改善」「鬱病の進行の軽減」「アルツハイマー病の改善」「がんの抑制」等に効果があると言われています。
日本人の食生活は欧米化が進み魚をあまり食べなくなったため、EPAやDHAの摂取量は減り気味といわれています。厚生労働省はEPAやDHAを合計で1日1g以上摂取するよう推奨しています。実際に日本人の摂取量は40代男性で約0.3g、同女性で約0.2gです。
EPAもDHAも青魚に多いとされていますが、魚介類の種類によって違いもあります。EPAがたくさん含まれている魚の代表はイワシで、サバやサンマにも豊富です。これに対してDHAは、マグロなどに多く含まれます。赤身と比べトロの部分に特に多く含まれています。同じ本マグロでもトロ100gにはDHAが約3gありますが、赤身だと約0.1gにとどまります。
EPA、DHAは酸化しやすいので注意が必要ですが、酸化しやすい脂質を摂る時は、一緒
に抗酸化物質(ビタミンC、E、B2、マルチカロチノイドなど)を多く摂るといいでしょう。
効果的に摂るには魚料理の調理にも工夫が必要です。刺し身で食べるのが理想的。通常の調理による加熱でEPAやDHAが分解することはほとんどありませんが、脂肪分と一緒にEPAやDHAが流れ出てしまいます。焼いたり煮たりすると約20%、揚げ物では約50%をロスします。ホイル焼きにして油をできるだけ逃がさないようにしたり、調理後にフライパンに残った油分でソースを作ったりすれば効果的に摂ることができます。また、煮つけなどでは煮汁も一緒に摂るとよいでしょう。魚料理が苦手な人向けには、練り製品や飲料に添加して摂りやすくした製品があります。魚の脂肪は酸化しやすいので、加工品も早めの調理を心掛けましょう。

 

■オメガ9系不飽和脂肪酸
代表的なのがオレイン酸ですが、人体内で合成することができるので多く摂る必要はありませんが、動脈硬化予防などに著しい効果を発揮することがわかり、食品からの摂取にも目が向けられています。HDLコレステロール(善玉)を下げずに、LDLコレステロール(悪玉)だけを除いて動脈硬化や心臓病、高血圧の予防に効果があるとされています。また、胃酸の分泌をコントロールして胃酸過多や胃潰瘍を防ぐ、腸を滑らかにして便秘の予防や解消に役立つ、放射線の害を防ぐなどの効果も認められています。ですが、過剰摂取はエネルギー過剰になり肥満を招くので注意が必要です。
オレイン酸はナッツ、植物油を始め脂質の多い食品のほとんどに含まれていますが、特に顕著に含まれているのはオリーブオイル(含有率70%)です。含有率の高い油は酸化されにくいため、発がんリスクを高める過酸化脂質の発生を防ぐので加熱調理にも安心して使えます。「バージンオイル」は低温圧搾法による一番搾りで、加熱されていません。オレイン酸含有量の多い「エクストラバージン」と表記されたものがおすすめです。

 

摂りたい油と控えたい油

もっととりたい油
オメガ3系不飽和脂肪酸
α‐リノレン酸など、魚油(ω3:30%、 ω6:20%)や、シソ(エゴマ)油、アマニ油(ω3:60%、ω6:20%)などに多く、現代人に不足しがち。
生活習慣病予防、免疫システム正常化によるアレルギー症状緩和、美肌や髪質の向上、便通改善、乳がんの発症リスクの低減、更年期障害の緩和。
とりすぎに注意したい油
オメガ6系不飽和脂肪酸
リノール酸など、コーン油(ω3:1%、ω6:50%)、紅花油(ω3:0%、ω6:70%)、ゴマ油(ω3:1%、ω6:40%)などに多く含まれ、調理によく使われるので摂り過ぎになりやすい。
適度にとりたい油
オメガ9系不飽和脂肪酸
オリーブ油(ω3:1%、ω6:10%、ω9:70%)などに多く含まれ酸化されにくい特徴。悪玉コレステロールを減らす効果も。
控えたい油
飽和脂肪酸
バターやラードなどの動物性脂肪。コレステロールや中性脂肪を増やす。
とってはいけない油
トランス脂肪酸
マーガリンやショートニングなどに多い油。心疾患を増やすとされ、米国などで規制が進む。

 

店頭に並ぶ「死んだ油」

■食用油は生鮮食品と同類

トランス型脂肪は、ごく普通に売られている食用油にも入っています。サラダ油やゴマ油、ベニバナ油など、植物を原料に使った、いかにも健康によさそうな図柄のパッケージに入れられた油が、スーパーマーケットの棚にはたくさん並んでいます。
本来、食用油は長く保存ができないもので、生鮮食品と同類のものです。本物の油であれば、冷暗所に置かれているもので常温の棚には並ばないでしょう。さらに、油は光に当たると酸化が進むので、遮光性のボトルに入れられているのが本来の姿です。
ところが、スーパーマーケットの棚に並んでいる食用油は、ほとんどが透明のプラスチック容器に詰められ、光をさんざん浴びているにも拘らず、いつまでもきれいな色をしています。このような油は製造過程で高温処理し保存剤などを添加して商品にしています。その過程で、油に含まれていた色々な栄養素や風味までもが失われてしまい、トランス脂肪も生じています。多くのCMでは「ピュア」などと、いかにもナチュラルで健康そうな印象を与えていますが、実際には「ピュア」には程遠い作り方をしているのです。
大切な栄養素や風味までもが抜き取られた油は、もはやフレッシュな油とはいえません。まさに「死んだ油」です。死んだ食べ物は、体の中に摂り込んでもまったく健康の役には立ちません。それどころか、このような製造過程で、トランス脂肪をはじめ、活性酸素や過酸化脂質などの有害物質が大量に発生し、私たちの体にダメージを与えてしまうのです。ラベルの表示に、「植物性油脂」「食用精製加工油脂」と書かれているものは、ほとんどがこのような製造法でつくられた可能性が高いので注意したほうがいいでしょう。

 

■植物油は低温圧搾されたものを選びましょう

油は低温でないと酸化、変質しやすいので低温圧搾したものがいい油です。ラベルの表示に、「コールドプレス」「低温圧搾」と書かれているものを求めましょう。低温圧搾とは、30℃以上の熱を一切かけずに原料を搾って油を抽出し、そのままボトル詰をしたシンプルな昔ながらの作り方です。このような方法で抽出した搾りたてのフレッシュな油が栄養豊富で、しかも一番安全というわけです。割高感は否めませんが、むしろ植物油が安価に入手できること自体が異常なのだと思っていただきたいものです。貴重な油を少量だけ用いるような食生活を送れば、結果として油の摂り過ぎも防げます。
口から入った食べ物は、さまざまな酵素が働き、いくつもの代謝の経路を辿って、やっと最終的にエネルギーとして使われるのです。ですから、不自然なものを食べると、そのときは何も起こらなくても、将来的に何らかの弊害が生じたり、症状として表に現れる可能性があるわけです。油に限らず、食品を選ぶときは、常に「自然なものか、不自然なものか」を念頭に置いて判断したいものです。

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