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選食力を身につけよう!(その15)-「機能性表示食品」について- 
NPO日本食育インストラクター・食育実践プランナー 小松 昭紀
広島市歯科医師会顧問

●「機能性表示食品」とは

 機能性表示食品とは、事業者の責任で科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして消費者庁に届け出た食品です。従来の特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品とは異なる新しい食品の機能性表示制度です。
 機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていました。そこで、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者がそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、2015年4月に、新しく「機能性表示食品」制度がはじまりました。
 「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)という食品の機能性を表示することができる食品ですが、あくまでも事業者の責任において、化学的根拠に基づいた機能性を表示したもので、特定保健用食品とは異なり、国が安全性と機能性の審査を行って認可したものではありません。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官に届けられているものです。
 なお、「花粉症の症状が和らぐ」「高血圧が改善する」など、病気の治療や予防の効果をうたってはいけないことになっています。

●機能性表示食品の安全性・機能性はどのように確保されているか

 事業者が、国の定めた一定のルールに基づき安全性や機能性に関する評価を行うとともに、生産・製造、品質の管理の体制、健康被害の情報収集体制を整え、商品の販売日の60日前までに消費者庁長官に届け出ることとなっています。届け出た内容については、消費者庁のウェブサイトで公開されます。これにより消費者は、商品の安全性や機能性がどのように確保されているのかなどについて、商品の情報を販売前に確認できます。さらに、消費者庁が中心となって販売後の監視も行います。
1.安全性の評価
 ・今まで広く食べられていたかどうかの食経験
 ・安全性に関する既存情報の調査
 ・動物や人を用いての安全性試験の実施
 以上のいずれかによって評価されます。また、医薬品との相互作用などについても評価されます。
2.機能性の評価
 ・最終製品を用いた臨床試験
   「最終製品を用いた臨床試験」により科学的根拠が示されている場合、
   商品パッケージに「○○の機能があります」のように表示されます。
 ・最終製品または機能性関与成分に関する文献調査(研究レビュー)
   「研究レビュー」により科学的根拠が示されている場合、「○○の機能
   があると報告されています」のような表示が基本とされています。
 以上のいずれかによって評価されます。「どのような科学的根拠に基づいて」「どのような人が」「どのように摂取すると」「どのような機能性があるのか」が明らかにされます。
3.生産・製造、品質の管理
 ・加工食品の場合、製造施設・従業員の衛生管理体制
 ・生鮮食品の場合、生産・採取・漁獲などの衛生管理体制
 ・規格外製品の出荷防止体制
 ・機能性関与成分の分析方法
 以上のような体制を整えることとなっています。
4.健康被害の情報収集体制
  消費者、医療従事者などからの連絡を受けるための体制が整えられています。パッケージに事業者の連絡先(電話番号)が必ず表示されています。
 以上の1~4の事項については、事業者から届け出された情報が消費者庁のウェブサイトで公開されていますので、届出番号ごとに安全性や機能性の根拠などに関する情報を知ることができます。(http://www.caa.go.jp/

●機能性表示食品利用上の注意点

・たくさん摂取すれば、より多くの効果が期待できるというものでは
 ありません。過剰な摂取が健康に害を及ぼす場合もあります。
・体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止しましょう。
・自身の食生活を振り返ってみて、主食・主菜・副菜を基本に食事の
 バランスがとれているかを確認してみましょう。
 体に良いかどうかデータを確かめるのに役立つのが、「 ○Participant(誰に対して)○Intervention(何をしたら) ○Comparison(何と比較して) ○Outcome(どうなるか) 」を示す英語の頭文字を取った「PICO(ピコ)」チェック法で、医学情報を読むときの疑問の立て方です。例えば、「P:日常的に目の疲れを感じている中高年の男女が、I:○○を含むカプセルを4週間飲んだら、C:○○を含まないカプセルを4週間飲んだ場合と比べて、O:目のピント調節機能が改善されたかどうか」ということで判定します。
 また、健康や医療に関して得た情報をきちんと理解して評価し、活用する力は「ヘルスリテラシー」と呼ばれていますが、このヘルスリテラシーを研究している聖路加国際大学のプロジェクトチームは、一般の人が学ぶためのeラーニング教材を作っています。そのなかで、健康情報を見極める際のキーワードを「い・な・か・も・ち」としています。
「い」:その情報はいつ書かれたか? 記事作成日、ホームページ作成日、
    本の出版年。情報が古いと、もっと新しい情報があることも。
「な」:何のために書かれたか? 本の前書きやあとがき、ホームページの
    運営目的。ひょっとするとただの宣伝かも。
「か」:書いた人は誰か? 書いた人や情報を発信している出版社、ホーム
    ページ運営者などをチェック。筆者の専門分野や所属学会などを調
    べる。インターネットの匿名には要注意。
「も」:元ネタ(根拠)は何か? 科学的な根拠がなく、個人の意見や主張
    のこともある。「利用者の声」に都合のいいものばかり載っていないか。
「ち」:違う情報と比べたか? 別の人が書いた本やホームページなどと見比
    べよう。
 こうした試験の結果を読むときに大切なのは、得られた結果が自分にも当てはまるかどうかという点です。たとえよい結果でも、自分に当てはまらなければ意味はないわけです。そもそも、試験に参加した人の年齢や困っている症状などが、自分とどのくらい似ているのか、いったん立ち止まって考えてみる必要があるでしょう。

●「健康食品」の問題点

 上記の表示制度が導入された背景には、いわゆる「健康食品」の広がりがあるようです。国民生活センターによると、健康食品の効能表示や健康被害の相談は全国で毎年1万件超に上ると報告しています。消費者庁は「表示の条件は緩やかでも、一定の科学的根拠を示すことで、消費者がより信頼性の高い食品を選びやすくなる」としています。
 ただし、トクホとは異なり、国は論文やデータを審査しません。国や自治体は制度の信頼性を確保するため、店頭での抜き打ち検査などをして、表示違反があればメーカーに是正や取り消しを求めるとしていますが、公開された資料・情報を消費者が読んで理解できるかは分かりません。あいまいな根拠で表示する悪質業者も出てくるでしょう。食べ物の問題は、一つ間違えれば命にも関る問題です。行政には厳しい監視体制を求めると同時に、消費者もメーカーのモラルに頼るだけでなく、情報を見極める知識を身につけなければなりません。
 また、健康効果への過度の期待も禁物です。機能性表示食品を食べてさえいれば健康を保てるわけではありません。ましてや病気の治療にもなりません。やみくもに飛びつかず、まずは表示をよく読み、自分に必要な栄養成分なのかをよく考えてみましょう。

●食事摂取基準をまずは基本に!

 目先の変わった、新しい製品に心躍らせるのもいいかもしれませんが、それに振り回されない方がいいでしょう。
 食品については、食事摂取基準に多くの答えが記載されています。食事摂取基準は、参考文献として大量の論文や報告書等があげられており、それらをレビューして基準値が設定されています。エビデンスの蓄積の賜であるこちらの方を、先ずは読んで判断することをお勧めいたします。

●警鐘を鳴らす食品安全委員会

 食品安全委員会は2015年末に健康食品に関する報告書を纏め、問題点を指摘し警鐘を鳴らしています。市民向けには、19のメッセージを公表しています(附記)。
 中身は多岐にわたりますが、「これさえ摂れば、元気で長生きできる」という薬や食品はないとし、「健康食品」で健康を害することがあるにも拘らず、情報が国民の目に触れにくいことが指摘されています。特に次の5項目について注意を喚起しています。
 ① 「食品」であっても安全とは限りません。
 ② 多量に摂ると健康を害するリスクが高まります。
 ③ ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがあります。
 ④ 「健康食品」は医薬品ではありません。品質の管理は製造者任せです。
 ⑤ 誰かにとって良い「健康食品」があなたにとっても良いとは限りません。

 報告書が特にくわしく触れているのがビタミンとミネラル。事業者が「不足している」と宣伝しがちで、欧米でも最も利用が進んでいます。しかし、食事の質の上がった近年、先進国では食事から摂れるようになっており、報告書は日本について「微量栄養素を食事以外のサプリメント等によって摂取する必要性を示すデータは今のところない」と断言しています。事業者の広告・宣伝には踊らされないで、健康に良いという根拠が数多くあり、効果が著しく大きいのは、多種類の食品をバランスよく組み合わせた食事です。単品の食品や健康食品ではないことを知っておきましょう。


(附記)食品安全委員会の「健康食品」に関するメッセージ

● 食品としての安全性について

 ①「食品」でも安全とは限りません。
 ②「食品」だからたくさん摂っても大丈夫と考えてはいけません。
 ③同じ食品や食品成分を長く続けて摂った場合の安全性は正確には
  わかっていません。

●「健康食品」としての安全性について

 ④「健康食品」として販売されているからといって安全ということでは
   ありません。
 ⑤「天然」「自然」「ナチュラル」などのうたい文句は「安全」を連想 
   させますが、科学的には「安全」を意味するものではありません。
 ⑥「健康食品」として販売されている「無承認無許可医薬品」に注意して
   ください。
 ⑦ 通常の食品と異なる形態の「健康食品」に注意してください。
 ⑧ ビタミンやミネラルのサプリメントによる過剰摂取のリスクに注意して
   ください。
 ⑨「健康食品」は医薬品並みの品質管理がなされているものではありません。

●「健康食品」を摂る人と摂る目的について

 ⑩「健康食品」は多くの場合が「健康な成人」を対象にしています。

   高齢者、子ども、妊婦、病気の人が「健康食品」を摂ることには注意
   が必要です。
⑪ 病気の人が摂るとかえって病状を悪化させる「健康食品」があります。
⑫ 治療のため医薬品を服用している場合は「健康食品」を併せて摂ること
  について医師・薬剤師のアドバイスを受けてください。
⑬「健康食品」は薬の代わりにはならないので医薬品の服用を止めてはいけ
  ません。
⑭ ダイエットや筋力増強効果を期待させる食品には、特に注意してください。
⑮「健康寿命の延伸(元気で長生き)」の効果を実証されている食品はあり
  ません。

●「健康食品」の情報について

 ⑯ 知っていると思っている健康情報は、本当に(科学的に)正しいもの
   ですか。情報が確かなものであるかを見極めて、摂るかどうか判断し
   てください。

●「健康食品」の摂取について

 ⑰「健康食品」を摂るかどうかの選択は「わからない中での選択」です。
 ⑱ 摂る際には、何を、いつ、どのくらい摂ったかと、効果や体調の変化
   を記録してください。
 ⑲「健康食品」を摂っていて体調が悪くなったときには、まずは摂るのを
   中止し、因果関係を考えてください。

 

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