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選食力を身につけよう!(その16)-「雑穀の効能」について- 

NPO日本食育インストラクター・食育実践プランナー
広島市歯科医師会顧問
小松 昭紀

 「選食力を身につけよう!(その13)」では低GI食品である雑穀についても触れましたので、今回はそれら雑穀の栄養成分などについて纏めてみました。
 穀物をはじめとする植物の種には、発芽に必要な栄養と、栄養をエネルギーに変えるための酵素が含まれています。穀物を精製しないで食べることで、栄養とそれを燃焼させる成分がバランスよく摂れます。だから、白米より玄米、小麦粉なら全粒粉、未精製の雑穀が有効なのです。加えて発芽時に栄養分をエネルギーに変える成分は、脳でエネルギーを作り出す成分と同じなので、玄米を食べることで脳にもよい影響が期待できるのです。
 

●雑穀は長寿日本人の食のルーツ

 はるか昔から、私たち日本人の長寿と健康は主食である穀類によって支えられてきたといっても過言ではありません。縄文時代前期(約55,000年前)にはすでに雑穀をはじめとする穀類が栽培されていました。「イネ」という言葉は、古代語では「命の根源」を意味する穀物の総称だそうです。以降、日本人は、穀類、野菜、魚を中心としたヘルシーな食生活で世界一の長寿国を作り上げてきました。日本で一般的に白米が食べられるようになったのは明治以降と言われており、それ以前はひえ、あわ、きびなどの雑穀を混ぜたものが主流でした。「五穀豊穣」という言葉があるのもその証でしょう。
雑穀は “固い” “ごわごわしている” などの理由で敬遠されがちですが、雑穀にはミネラル類、ビタミン類、食物繊維などが多く含まれており、でんぷん質とたんぱく質が主な栄養素である白米をはるかに凌ぐ栄養バランスのよさを誇っています。
 食物繊維を多く含んでいる雑穀は、固いが故に普段より多く噛まなくてはならないので、噛むことにより満腹感が増し、結果的に多くの量を食べ過ぎずに済みます。抗肥満効果があるだけでなく、噛むことで脳の血流が良くなり、脳の活性化効果が期待でき、認知症などの防止にも役立ちます。
 ただ、いきなり雑穀だけといったメニューでは、白米に慣れている人は抵抗を感じるでしょうから、白米に雑穀を少しずつ混ぜて炊くことをおすすめします。雑穀の量は20%程度であっても、健康に十分良いことが証明されています。雑穀を美味しくいただくコツは、炊く前に水に浸してアク抜きをすることです。市販されている雑穀は、ほとんどがすぐに炊ける状態になっていますが、水に浸すことでより食べやすくなります。
 一口に雑穀といっても様々な種類があります。それぞれは栄養成分においても、おいしさにおいても、また効能や食感においても異なった特徴をもっています。そうした特徴を知り、家族の体調や好み、当日のおかずなどにより、白米と上手く組み合わせて用いるとよいでしょう。また、雑穀の効果を得るには、毎日摂り続けることが肝要です。
 

●代表的な雑穀

◎大麦(押し麦、丸麦、裸麦)― 豊富な食物繊維が腸内環境を改善

 大麦のたんぱく質は、アルブミングロブリンが主です。食物繊維が豊富で(白米の19倍)、水溶性と不溶性の食物繊維をバランスよく含んでいます。とくに抗酸化作用のあるセレンが多く含まれているのも特徴です。
 大麦を精白して蒸し、ローラーで平たくしたのが押し麦です。もちもちとした食感と麦ならではの風味があります。押し麦の特徴は、穀物には珍しく水溶性の食物繊維が豊富なことです(β‐グルカンなど玄米の3倍)。水溶性の食物繊維は、食べ物が消化される過程でコレステロールや有害物質などに絡みつき、体外に排泄するのを助けてくれる働きがあり、腸内環境を整える効能を持っています。
(栄養成分の特徴)
 たんぱく質のアルブミンとグロブリン、セレン、ビタミンB群、カリウム(白米の2倍)、カルシウム(白米の3倍)、食物繊維(白米の19倍)、水溶性食物繊維のβグルカンといった栄養素が豊富
(主な効能)
 血糖値上昇抑制作用、血中コレステロール抑制作用、整腸作用、便秘解消、デトックス効果、がん予防効果
(ゆで時間)15~25分


◎はと麦 ―豊富なアミノ酸含有量と 代謝能力を高める「デトックス雑穀」

 麦茶でおなじみのはと麦は、たんぱく質が穀物の中でも多く(約13%)、必須アミノ酸が豊富に含まれており、その組成は穀類中一番良質です。古くから薬用としても用いられており(漢方ではヨクイニン)、いぼ取りの妙薬とされています。優れた新陳代謝作用とコイクライドという抗腫瘍成分の働きによるものと考えられています。その他、にきび、しみ、そばかすを取る美肌作用もあります。抜群の代謝促進能力が特徴で、「デトックス雑穀」といえます。
(栄養成分の特徴)
 たんぱく質(13%)、カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンB群、食物繊維などが豊富
(主な効能)
 美肌効果、利尿作用、解毒作用、高血圧予防、抗腫瘍作用、新陳代謝促進
(ゆで時間)20~25分
 
 
◎あわ(粟)― 味が食べやすく、優れたミネラルバランスと美肌効果が特徴

 あわは、縄文時代から栽培されていた日本最古の穀物です。今でも、粟ぜんざいや粟おこしに用いられており、あっさりとしてくせがない味のため雑穀類の中でも食べやすいのが特徴です。
(栄養成分の特徴)
 豊富なミネラル(鉄が白米の6倍、マグネシウム5倍、カルシウム3倍、カリウム3倍)、食物繊維は白米の約7倍、また肌荒れに効果があるパントテン酸が雑穀類の中では最も多く含まれ、他の有効成分には、ポリフェノール、ビタミンB群、Eなど。
(主な効能)
 血中の善玉コレステロール向上作用、脂質代謝改善作用、抗酸化作用、疲労回復、肝機能の強
化、貧血予防、美肌効果
(ゆで時間)3~4分
 
 
◎きび ― 黄色色素のポリフェノールに抗酸化作用、膵臓や胃の働きを助ける

 きび団子の原料としても知られる雑穀ですが、黄色の色素はポリフェノールの1つで抗酸化作用があり健康長寿食の1つです。また、肝臓の解毒作用に関るメチオニンが豊富。代謝を促進して美肌効果、味覚機能の低下を防ぐなどの効果があります。味も卵のようなコクがあって、栄養バランスも優れています。粒がやや大きく、噛み応えがあります。
(栄養成分の特徴)
 ポリフェノールの他、メチオニン、ビタミンB群(B1、B6、ナイアシン)豊富、食物繊維、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄分など白米の約3倍
(主な効能)
 善玉コレステロールを高める、膵臓や胃の働きを助ける、抗酸化作用、動脈硬化予防、
高血圧予防、解毒作用、代謝促進、美肌効果、生殖機能の健全化、味覚機能の低下防止
(ゆで時間)5~6分
  
◎ひえ ― トリプトファンが豊富で精神を安定

 ひえは小粒でグレーがかった白い実で、風味に特徴があり、ミルキーな味わいがあります。ひえには神経伝達物質セロトニンの材料となるアミノ酸のトリプトファンが豊富に含まれていますので、精神を落ち着かせたいときにいいようです。また、ひえは穀物の中で最もアレルギーになりにくい食品で、アレルギー除去食品としても知られています。パラパラとした食感で料理に合わせやすいのも特徴です。
(栄養成分の特徴)
 トリプトファンの他、脂質、カリウム(白米の約3倍)、カルシウム、マグネシウム(白米の約5倍)、鉄(白米の約2倍)、食物繊維(白米の約8倍)をバランスよく含む。
(主な効能)
 精神の安定、善玉コレステロールの向上、脂質代謝改善機能、骨粗鬆症の改善、整腸機能、
便秘改善、アレルギー除去
(ゆで時間)5~6分
 
 
◎黒米 ― 古代米の生命力が、がんや生活習慣病を予防

 野生の稲の特質を受け継ぎ「生命力が強い」といわれる古代米ですが、ぬかの部分にその生命力、つまり栄養が集約されています。白米に混ぜて炊くと、白米が紫になるほどパワフルです。この黒い色素は、ポリフェノールの一種であるアントシアニンで、強い抗酸化作用をもち、がんや生活習慣病を予防して老化を防いでくれます。もちもちとした食感があります。
(栄養成分の特徴)
 アントシアニンの他、ビタミンB群、ナイアシン、ミネラル類が豊富、食物繊維(白米の約7倍)、カルシウム(白米の約4倍)、マグネシウム(白米の約5倍)、カリウム(白米の約7倍)、鉄分
(主な効能)
抗酸化作用、発がん予防、生活習慣病予防、血管老化予防、動脈硬化予防、胃腸の機能強化、便通改善
(ゆで時間)10~15分
 
 
◎赤米 ― がんや生活習慣病を予防

 黒米と同様の古代米です。色が赤褐色で果皮、種皮部分の赤色系色素は、ポリフェノールの一種のカテキン・タンニン系色素です。味はあっさりして、プチプチとした食感です。
(栄養成分の特徴)
 ポリフェノールの他、食物繊維(白米の約8倍)、カルシウム(白米の約3倍)、マグネシウム(白米の約4倍)、カリウム(白米の約3倍)、ビタミンB1(白米の約5倍)
(主な効能)
 発がん抑制作用、血中コレステロール低下作用、血圧上昇抑制作用、血糖値改善作用
(ゆで時間) 10~15分
 
 
◎アマランサス ― 貧血や骨粗鬆症の予防に

 ヒユ科ヒユ属の1年草で背丈は1~2mになり、ケイトウに似た赤やベージュの花をつけます。種子は直径1~1.5mmで非常に小さく、栄養的特徴は、たんぱく質にリジンを多く含み、ミネラルと食物繊維が多く含まれ、他の雑穀に比べて栄養バランスが非常に高く、「21世紀の栄養食品」としてアメリカの航空宇宙局(NASA)も注目しています。また、アレルゲンを持たないので、穀物アレルギーの代替食としても優れています。プチプチとした食感が特徴で、あえものに適します。
(栄養成分の特徴)
 たんぱく質のリジンの他、ビタミンも豊富、食物繊維(白米の約15倍)、カルシウム(白米
の約32倍)、マグネシウム(白米の約12倍)、鉄(白米の約12倍)、カリウム(白米の約7
倍)
(主な効能)
 慢性貧血病予防、骨粗鬆症予防、高血圧予防、肥満予防
(ゆで時間)3~4分
 
 
◎ブレンド雑穀― 見た目がカラフルになるほど健康長寿に効果的
 白米を食べ慣れた人が、いきなり玄米100%に切り替えると、味や食感の違いによって挫折してしまうケースが多いという理由から、「五穀米」などの雑穀のブレンドが生まれました。雑穀を食べるのが初めての方なら、白米に玄米や数種類の雑穀をプラスするだけでも栄養価が高まり、うんと食べやすくなります。一般的に加える量は白米の5~20%で、20%になると医学的な効果も高まるといわれています。市販の雑穀なら味のバランスも調整されていますので、手軽においしく食べられるでしょう。
 雑穀ミックスの長所の一つは、複数の栄養素が摂れること。また、たくさん噛む必要があるため、満腹感を早め食べ過ぎを防ぐ、脳の血流を良くする、といった利点もあります。
体を温めたいなら、黒米や黒豆など黒い素材が多い物を。血糖値を下げ便通を良くするには、食物繊維が豊富なアマランサスや麦を含むものがおすすめです。
 ブレンドされた雑穀には「十穀米」「十八穀米」「二十穀米」とさまざまな種類がありますが、ミックスした雑穀の見た目がカラフルであればあるほど、健康には効果的です。その中でも、最もポピュラーな存在といえるのが「五穀米」でしょう。五穀米にどの穀物を入れるかという明確な定義はありませんが、一般的には白米、麦、あわ、ひえ、豆といった白っぽい穀物を、雑穀が苦手な人用にブレンドしたものが多いようです。
 五穀米に慣れてきたら、徐々に雑穀の種類を増やしていくのがポイントです。ミックスする穀物の種類が多いほど、健康への寄与度は高まります。たとえば、十八穀米を3ヶ月間、肥満体質の人に毎日食べさせた調査によると、体重や皮下脂肪が減少し、メタボリックシンドロームの指標とされているBMIも驚異的に下がったそうです。また普通のパスタと、雑穀パスタを食べたときの血糖値の変化を比較した調査では、雑穀パスタのほうが血糖値の上昇が緩やかで、インスリンの分泌量も抑えられるという結果も出ています。 
(市販ブレンド雑穀)
(大麦、もちきび、黒豆、もちあわ、黒米、緑豆、小豆、黒ゴマ、アマランサス)

 
(まる麦、小豆、黒大豆、高きび、黒米、赤米、はと麦)

 

●毎日摂り続けることが肝要

 雑穀の効果を得るには、毎日摂り続けることが重要です。さっそく食事に取り入れたいところですが、雑穀入りご飯だけでは飽きる人もいることでしょう。そこでお勧めしたいのが、雑穀をゆでて、おかずのかさを増す素材として使う方法です。コロッケや肉団子に混ぜれば、食感にアクセントが出るだけでなく、低カロリーで歯ごたえも加わり満足感を得られます。ほかにも鮮やかな色味を利用して、サラダにあえるだけでも、ちょっとした来客の際によろこばれるおもてなし料理になります。
 デザートにも活用できます。例えば、ココナツミルクに黒米を加えればタピオカのような味わいになるほか、押し麦とヨーグルトをあわせれば、お腹に優しいデザートになります。
 ダイエット効果あり、便秘解消効果ありと体にうれしい成分ばかりの雑穀ですが、もちろん、むやみに多く摂ればいいというわけではありません。食物繊維の摂取量を急に増やすとかえって便秘になることもあるため注意が必要です。腸が慣れるまでは、1日の摂取量は大さじ2杯程度を目安にするのが良いでしょう。
 
   

●事前にまとめゆでが便利

 雑穀は事前にまとめゆでしておくと、冷蔵庫で2日間、冷凍庫で1ヶ月間も保存できるので調理に便利です。ハト麦など硬めの食感の雑穀は、事前に15分から30分間水に浸しておけば、ゆで時間を短縮することができます。
 雑穀はアクが強くて苦手だという場合には、ゆでる際に、湯にオリーブオイルやゴマ油を少量加えると、風味がよくなり食べやすさが増します。
 ゆでるのも面倒だという人には、小粒の雑穀であれば、レンジで炊く方法もあります。まず、倍量の水を入れてラップをし、600ワットのレンジで1分半から2分半加熱し、ラップをしたまま5分蒸らし、再び1分加熱すれば炊き上がりです。準備も簡単な雑穀を、ぜひ日常食として取り入れたいものです。


 

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